新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、「防災ふらっとカフェ」の開催をしばらく見合わせていましたが、「どのようにウィズコロナの時期を過ごしていくのが良いのか」「災害が今起こったらどうなるのか」という大事なテーマについて考え、それぞれの対応力をアップしていくことを目指してオンラインのイベントを企画しました。区内在住・在勤の方を中心として約40人の方が参加するイベントとなりました。
今回は、小児科医の坂本先生に、正しい医療情報の集め方をはじめ、新型コロナウィルス対策とホームケア、防災など、幅広くお話を伺いました。
◆講師 小児科医 坂本昌彦先生
佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。読売新聞ヨミドクター 角川書店 「マンガでわかる! 子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK」監修
◆坂本先生のお話
1. 正しい医療情報の集め方
インターネット検索上位の情報が正しいとは限りません。正しい情報を得るためのポイントは?
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- NGワードを知る
- NGワードその1:「100%です」「絶対~」
…人の体はとても複雑なので、100%、絶対ということはありません。
- NGワードその2:「最新の方法です」「最先端のやり方です」
…最新の方法が最善の方法とは限りません。最善の方法とは、
標準的な方法つまり、保険収載されているもの(保険で治療できるもの)であると考えられます。
- NGワードその3:「免疫力」「免疫力を上げる」
…免疫は落ちないようにはできるけれど、上げることはできません。
- 発信者に気をつける
- 公的機関の情報(厚生労働省、国立感染症研究所など)
→医師やクリニックの情報なら正しいわけではありません。
- きちんとした学会の情報(日本医学会分科会に含まれる学会)
→学会は誰にでも作れるため、「~学会」と書いてあればすべて信頼できるわけではありません。
- 根拠や出展を示しているか?
- 論文・ガイドラインを根拠にしている→〇
- ブログ、ウェブサイト、医療関係者の知人からの情報、「~らしい」という伝聞情報→×
- SNSでの情報収集のポイント
- 公的機関をフォローする
- 医療者をたくさんフォローする
→偏った特定の人だけでなく、多くの医療者が同意する情報は正確な可能性が高いと考えられます
- 断定的でない情報を選ぶ
- 平凡に感じる情報を選ぶ
- インターネット情報の限界
→断片的な情報では安心を得られないことから、医療者とのコミュニケーションが大切です。
2. 災害時に役立つ情報<普段の予防接種と普段のホームケア>、病院受診の目安
- 予防接種
災害から子供を守るためには、【ホームケア】【事前の予防接種】など、普段の備えが大切です。
予防接種や健康診断は遅らせずに受けましょう。
- 予防接種は致命率や後遺症率の高い病気が多い
- 適切な時期に接種することでリスクが下がる
- 乳幼児健診の目的:気になることの解消、発達や病気のスクリーニング
- 病院受診の目安
- 環境の変化に対する子供のストレス反応
- 身体的症状:頭が痛い、おなかが痛い、眠れない、食欲がない など
- 行動の変化:大人から離れない、赤ちゃん返り、攻撃的な態度、遊びの変化、おもらし など
環境変化に対してのストレス反応は正常な反応。災害時も同じ。
子供の不安をそのまま受け止める(否定しない)。保護者自身のケアも大切
【子供のためにできる6つのこと】
- 子供と向き合う時間をつくる
- 日常(ルーチン)を維持
- ほめる、感謝を伝える
- 体を動かす
- 繋がりを保つ(オンラインでもゲームでもよい。友達や人同士の繋がりを大切に)
- 必要十分な正しい情報を伝える(まず大人が正確な情報を知る。テレビの情報量は多いのであまり見せすぎない)
- 無料アプリ「教えてドクター」
病院受診の目安をはじめ、予防接種、防災情報など、役立つ情報が得られるアプリです!
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3. 咳・発熱のホームケア
- 咳
- 【観察ポイント(病院で伝えるポイント)】
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- いつから始まったか?(突然?おもちゃやお菓子を食べてなかったか?)
- どのような咳か?(乾いた咳・痰が絡んだ咳、ゼイゼイ?ケンケン?)
- 一番ひどいのはどんなときか?(日中?朝や夜?運動したとき?)
- 咳以外の症状はないか?(嘔吐、発熱、下痢などほかの症状)【咳のホームケア】
- 口の中をこまめに加湿する(水分をとる)
- 温かい飲み物をとる
- 飴をなめる(誤嚥のリスクが低い4歳以上)
- 【咳のホームケア】
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- 口の中をこまめに加湿する(水分をとる)
- 温かい飲み物をとる
- 飴をなめる(誤嚥のリスクが低い4歳以上)
- 発熱
- 【いつ受診する?解熱剤を使えば早く治る?】
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- 熱の高さと受診のタイミングは関係ない(熱は体を守るための免疫のしくみ)
- 受診の目安は、ぐったりしている、何度も吐く、水分摂取の有無が大切
- 解熱剤を使ったからといって治りが早まることはなく、けいれんを予防することはできない
4. 熱中症(外の環境が原因)
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- 湿度が高いとリスクが高い
- 体がまだ暑さに慣れていないとリスクが高い
- 梅雨明けから増え7月上旬がピークに、外出を自粛し体が暑さに慣れていない今年は要注意
- 乳幼児は熱中症のリスクが高い
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- 【何に気を付ければよい?】
- 車内放置を避ける(特に乳幼児)
- こまめな水分補給
- 十分な休養
- 暑さに慣れる(汗をかきやすい体に)
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この他にも、学校再開やPCR検査など、コロナウィルス関連の情報も詳しくご紹介いただきました。特に、空間除菌と次亜塩素酸ナトリウムに関しては、受講者の皆様から「知らなかった!」「ためになった!」など、多くのご感想をいただきましたので、一部ご紹介します。
◆坂本先生のお話
- 空間除菌についてのWHOの見解
- 空間除菌の効果は現時点では不明。
- 屋内も屋外も健康に悪影響(粘膜、呼吸器、消化器への影響を引き起こす可能性)があり推奨しない。
- 消毒は染みこませた布で行いましょう。
- 次亜塩素酸ナトリウムの効果は?
- 次亜塩素酸ナトリウムは新型コロナウィルス感染症に有効で、ドアの取っ手など物品の消毒に有効。
- アルカリ性なので手指消毒に使うと手指の皮膚がダメージを受けるため、手指の消毒には使えません!!
- 濃度0.05%が推奨=キッチンハイターだと水1㍑に25ml
- 消毒した後は金属を腐食するため必ず水拭きもセットで行いましょう
- 次亜塩素酸水の効果は?
- 食塩水を電気分解して作る(弱酸性)。
- 次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)とは別物。
- 器具の消毒に使うが、有機物(人体)に触れるとすぐに無効になる。
- 手指消毒の効果は未証明。
- 新型コロナ感染症に効果があるか不明。
- ボトルに詰めると早々に不活化してほぼ水になる(消毒効果乏しい)。
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また、質疑応答・グループディスカッションでは、保育園でのマスク着用など、普段の生活の中での疑問点もお寄せいただき、理解を深めることができました。参加者の皆さまからは、
- コロナについてはまだ正確なことはわかっていないことも多いので、これからも情報を収集し続けていこうと思った
- PCR検査をやみくもにやらない理由について、数字で説明してくれてわかりやすかった
- 次亜塩素酸水についての正しい知識を得られてよかった
- 災害時には特別なことをしないといけないイメージがあったが、日常のホームケアが災害時にもつながるという点が、特に印象に残った。
など、多くのご意見・ご感想をお寄せいただきました。
江戸川みんなの防災プロジェクトでは、今後も、防災に関する様々な勉強会やイベント、ツールの制作などを予定しております。活動の様子はこのホームページでご報告しますので、ぜひご覧ください!!